深圳湾体育中心
ポーラスな外皮による呼吸する建築
ユニバーシアードメイン会場
2011年に開催された深センユニバーシアード大会のメイン会場となる複合スタジアムです。08年の北京オリンピックを皮切りに、10年の上海万博、広州アジア大会に続く国家的イベントの掉尾を飾るイベントにふさわしい空間のあり方が求められました。
亜熱帯の気候と共生する建築
計画地は亜熱帯地方特有の海岸線とマングローブが密生する美しい自然の中にありますが、夏季は酷暑と強いスコールに見舞われる地域です。こうした峻烈な気候条件に対し、呼吸するように内外を柔らかくつなぐ建築のあり方を考えました。
都市に開かれた公園のような空間
多様な交流が起きるよう、スタジアムなどの主要空間を連続させて一体感をもたせました。外縁部にはプロムナードを設け、ユニバーシアード大会のようなイベントだけではなく、日常的に人が立ち寄れる公園のような空間を作り出しています。
開放性のある外皮で包む
開放的で柔らかな空間を実現するために網目状の外皮で各施設を覆っています。この外皮は鉄骨を用いた立体的なもので、数万点に上る鉄骨フレームから構成されたものです。網目の開口部は接地面に近づくほど大きくなり、内外の境界がより希薄になっていきます。
にぎわいと自然が相互に浸透する
メインコンコース中央には中庭空間となる「大樹の広場」が設けられています。この広場には日差しや雨、風などが緩やかに制御された自然環境が浸透し、居心地の良い環境が展開し、自由に人が集まれる空間となっています。
自然からまなぶデザイン
自然界からデザインの可能性を引き出すバイオミミクリー論が近年注目を浴びています。例えばクスサンという蛾は、スカシダワラと呼ばれる中が透けて見える堅い網目状の繭をつくります。本施設もこうした生物の営みのメタファーとして捉えることも可能と言えるでしょう。
設計者からの一言
北京オリンピックのメイン会場が「鳥の巣」と呼ばれているように、本施設は「春繭」という愛称で呼ばれています。中国の人は愛称をつけることが好きですが、本施設も、自然発生的にこのように呼ばれるようになったことで人々に愛される施設になっていると感じています。