『広場が庁舎』
建築を考える時、都市を含めた環境の課題を わたしたちは、建築で応えていく
Architects‘ writings: 01 志木市庁舎
「ルビンの壺」が好例だ。ものごとには両義性がある、どちらも等価ある、それが本質なのだ、ということをわたしたちば学びたい。
建築も、わたしたちの身近にあふれる道、公園、橋、川といったと要素と一体となって、都市が成り立っていることに気がつく。
建築との主従の関係はなく、両義性をもつものなのだ。
その考え方は、建築を考える上では、平面だけでなく断面にも及ぶ。
だから、わたしたちは、「広場」にこだわりたい。
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「グラス」=「Uネック」
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「ルビンの壺」
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断面ダイアグラム
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断面も両義性をもつ
求心力を持たせたい
弧を描くテラスが積層する。深い軒下は、まちを一望する活動の場となる。志木市の“市民力”の姿が映し出される。広場に市民が溢れかえる時、テラスはさながら観客席となり、イベントを鮮やかに彩る。ここを求心力をうみだす場にしたい、わたしたちはそう考え、広場をつくった。
コミュニケーションに働きかける
広場は、通りとフラットにつながっていない。少しだけ高い。段にして5段。これは、ちょうど縁側の縁台のような高さだ。少しだけ視点が高い、それだけで日常の景色は新鮮に感じられる。だから、この場に立つと、きっと会話もはずみ、人と人との距離は近く感じられるはずだ。縁側のように。
都市のレジリエンスを高める
現代の広場に求められことは何か。広場をつくることは、その意味を考えることでもある。川は舟運をもたらしてきたが、時に牙をむく。水害だ。まちづくりに必要なこと、それは、川との共存である。広場は、川の氾濫を凌ぐ高さとした。ここに来れば守られる、その安心感をつくりだしたい。
ここにしかないオープンスペース
建物が取り囲む西欧の広場とは、少し趣きが異なる。ここには庁舎が面するだけだ。そのかわりに、川のせせらぎ、遡上する風、土手の桜、公園の緑、そして通りを行き交う人々、が広場を包み込む。このまちならではの穏やかな風景そのものだ。志木の空気感をまとう、そのような広場だ。
ドラマが生まれることを期待して
階段のある広場をつくりだした。階段は、視点に変化を与え、高揚感を生みだす役割をもつ。映画では、印象的なワンシーンに必ずといっていいほど、階段は登場する。わたしたちは、日常の中に、印象的で、記憶に残る場をつくりたい。ドラマが生まれる場をつくりたい。そして、都市にいきいきとした躍動感を与えたい。
撮影:川澄・小林研二写真事務所
STAFF
施設概要
名称
志木市庁舎
所在地
埼玉県志木市
用途
庁舎
構造
SRC、S造(免震構造)
規模
地上4階、地下1階
延床面積
12,621.63㎡
竣工
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2022年6月