建築について、佐藤総合計画の細田雅春社長は「これまでは、社会のあらゆるものが建築に収斂し、時代の総和となってきた」とし、「建築をみれば、その時代の社会的背景や技術・芸術などすべてのものが理解できた」と語る。
ところが現代社会は、グローバル化、情報化が進み、エネルギー問題や資源、環境問題なども、多様な価値観を同時に意識しなければ解決できなくなっている。しかも、グローバル化は、バーチャル化という状況・環境を伴って肥大化し、何が真実か、何が大切か、何が原因かを特定することが難しくなってきている。そこでは、「経済的問題が社会や都市問題を凌駕し、実体社会の中を跋扈するバーチャルな『経済の力』(効率性)が、複雑さをより一層増幅させている」ために、都市がもつ多種多様な機能中に建築が取り込まれ、建築の分断化、分散化が常態化し「建築の定義がしにくくなった」と指摘する。
同時に、均質化や平均化によって、あらゆるものが経済指標や統計の中で扱われ、人間の価値もそれらに合わせて相対化してきたという。しかし、「東日本大震災でそのことが大きく揺さぶられた」
人びとはその衝撃がもたらした状況から、「土着性や地域の問題、身体性、個々の個性など、リアリティーを求め始めた」と指摘、「そうした問題も含めて、経済に支配されている社会システムと身の回りの現実という『二律背反』する問題をどう捉えていくかが大いなる課題だ」とする。
建築は、大地の上に建つものだ。素材もユーザーも、建設するという行為自体も、すべてがリアリティーそのものでもある。「その建築の生産システムが分散化、相対化している現実にどのように切り込むか、設計事務所のスタンスは目標を定めにくくなり、そのスコープも不明瞭になってしまっている。こうした事態に対し、設計事務所の役割も問い直されるべき状況になっている」と語る。
こうした背景のもとでは、「一つの事務所だけで課題を解決する時代は限界を迎えている。美しい建築、機能的な建築を作るといった平均的な対応では通用しなくなるだろう、しかし、こうした状況においても、大手総合事務所は、最終的に『デザインの力』についてきちんと考えなければならないし、現代社会を捉えるデザインとは何なのかという答えを出せる想像力が必要だ」と指摘する。
また、佐藤総合計画は「社会貢献の部分にはずいぶん力をいれている」。利益に直結するものではないが、これからの日本をどうしていくかが問われている中で、都市や建築にかかわる専門家として「それに応えることが必要だ」と強調。
「要は、社会が進むべき道・求める目標に対し、デザインを通して『最適な道筋を構築する』ことが設計事務所にとって最も重要だ」と語る。