地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター
「光・緑・水に溢れた環境」の創造と高齢者医療の先端をめざした施設づくり
施設と地域をつなぐ3つの道
来院者に分かりやすく、安全にアプローチできるよう、敷地の南北をつなぐメインルートを設けました。また、今後計画される他施設との成長の軸となる東西をつなぐ歩行者専用の通り、そして緑の回廊として地域に開かれた散策路を設け、水辺や緑を活かした「ホスピタルパーク」をつくり、地域の皆様に親しまれる施設をめざしています。
周辺環境に配慮した外観計画
低層棟部分は、自然光を取り入れるために分節化し、散策路と緑により潤いのある街並みを演出しています。
高層棟部分は、日射を和らげる繊細な簾ルーバーで大きな面が与える圧迫感を和らげました。
研究所部分には西日を防ぐ縦ルーバーを設け、近隣への視線を和らげ、ランダムな配置と色彩によりソフトな表情をつくっています。
高齢者にわかりやすく、心和ますインテリア
サクラやケヤキなど既存高木の円形の広がりが、玄関脇の円形型サロンやエントランス吹き抜け、さらにホスピタルモールの曲面に連続し、外来受付へと自然に導かれるようなウェイファインディングデザインとしています。
高齢者医療の先端をめざした施設づくり
わかりやすく、スタッフがサポートしやすい外来
外来には、総合案内に加え、6つのブロック受付を円形のわかりやすい形態で設けました。ブロック受付は計算受付、道案内の機能を兼ね備えた患者サービスの拠点です。外来部門の縦動線は、専用エレベータを配置しました。サインは目線に入るよう、大きさ、高さ、色に配慮し、さらにグラフィックを加え誘目性・認知性を高めています。
見守りケアしやすい病棟
病棟は、認知症を合併している患者さんにも配慮し、管理がしやすいスタッフステーションの配置としました。
また、スタッフステーション周辺に重症個室と1床室を設け、より迅速に対応できる計画としています。さらに病棟の廊下幅は全て2.7mを確保し、患者さんの歩行訓練の場として利用できるようにしています。
高齢者の特性に配慮した病室
高齢の患者さんが動きやすいよう、4床室は6m×6mの内法を確保しています。また、トイレは、1床室ではベッドから便器までの移動がしやすい位置に設定し、4床室では夜間のトイレ利用がステーションから確認できる位置に車いす対応トイレを分散配置しました。照明などのスイッチは寝た状態でも使えるウオールケアユニットを計画しました。インテリアは、木の質感と柔らかな光で安らぎある空間です。
設計者からの一言
高齢の患者さんの「使いやすさ」「快さ」を追求し、建築をはじめとするさまざまな分野すべてが融合し全体の調和がとれた空間を実現するため、関係スタッフの皆様と共に一丸となってつくりあげました。
「広いスペース、床素材、手摺、サインの最適性」など、安全面や分かりやすさに加え、アートや自然の恵みを取り込んだ「心和む」空間づくりが、患者さんの治癒につながればと願っています。
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センターの特徴
高齢者の患者さんは身体能力の低下、免疫機能の低下に加え、認知症を併発した患者さんが多く見られます。「安全」だけを考えた看護、施設では不自由な生活を強いることとなってしまうため「できることは何か」の視点で、看護師、医師を含むユニバーサルデザイン委員会を立ち上げ、アドバイザーとして髙橋儀平先生(東洋大学)野口祐子先生(聖学院大学)のご意見を聞きながら、特に高齢者に配慮したユニバーサルデザインのあり方についての熱心な議論を経て具現化しました。
撮影者:エスエス東京