時代の環境は、とりわけ昨年の3.11東日本大震災以来、さまざまな状況変化が起き、私たちの価値観や行動に降りかかってきています。それゆえ、現在もこれからも明確な輪郭ある世界像が見えにくくなっています。こうした状況は、ドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンが言うところの「われわれは常に渦巻く星雲状態の中にいる」ことなのです。そしてそのときに生まれる「認識は稲妻の閃光のようなものでしかない。テクストは稲妻の後から長く続く雷鳴である」と言えます。
皆さんは、これからさまざまな出会いや事件に遭遇することになりますが、われわれの設計行為とは、そうした出会いや事件にぶつかってきらめいた閃光を捉え、自らの文脈に即して一つの「体系化されたストーリー(物語)を作り上げること」なのです。あたかも「衝突の中で花火が散る。その花火の小さな光の中で、かすかな可能性の形象が浮かび上がる」と言うことです。
こうした繰り返し、試行錯誤の中で、さまざまな他者とのコミュニケーションをとることが大切になります。現実の社会は、大学時代の成績や評価とは全く異なる世界であることを強く認識してください。そして、現在という視点を通して、過去から未来への眼差しを持つことです。さまざまな「衝突を回避しないこと」が重要です。「出会いや衝突の中にある何か」を探り出すことが、これからの皆さんの仕事です。そしてその結果の集積が皆さんの将来を作り出すことになるのだと思います。
皆さんのこれからの努力と可能性に期待しています。がんばってください。