取り巻く情勢をどう読む。
グローバル社会では、国内と海外を対立させて競争をあおり、発展するという経済成長の手法は過去のものになった。国際社会や世界経済は、米国や欧州、中国などとの微妙な関係性の中で成り立っており、日本でも今までの成長の視点ではなく、成熟社会の新たなる戦略が求められている。経済の量的な成長なくしても、『豊かで活力ある経済』を目指すべきだ。
具体的には、豊かさを体感できる『コンパクトシティー』の構築が必要だ。これまでのような均一的で拡大志向の開発ではなく、地域ごとに特色と個性を持ち、コンパクトで効率的で活力あふれる街をつくる。コンパクトシティー化は、人口減少とともに経済や税収も縮小する日本社会の目標となり、元気や可能性を生み出す。
どのように具現化していくか。
既に学校の統廃合や庁舎の合併などストックのコンパクト化が始まっている。それを都市まで視野を広げて考える。新技術を開発し積極導入して、世界に類を見ない新しい魅力ある都市の姿を世界に発信するべきだ。東北の復興まちづくりでコンパクトシティーのモデルが一つでも示せればと思っている。またコンパクトシティー化は、インフラの再整備やスマート化の推進を伴い内需を拡大し、国土の強じん化につながっていく。
経営方針は。
『日本の都市構造(形)を変える』というスタンスを内外に示し、設計事務所としての社会的役割と使命を果たしていく。社会や顧客とともに新しい種を見付け芽を育てる『シーズ型』の提案を大事にする。現在の280人体制を堅持しつつも、社会貢献的投資や先行的提案を拡大させたい。着実に現状を分析しながら、次の世代への課題を模索し始めている。
常に公共のあるべき姿を視野に入れ、都市ビジョンを前提に建築のあるべき姿を追求してきた。公共建築は行政が市民に与えるものから、市民や行政、専門家が共に創り上げていくものに変わった。みんなで創るということは、みんながそれぞれに責任を持つという社会だ。街は住み続け、使い込んでいくことで美しくなる。こうした意識を市民に持ってもらうよう努力するのも私たちの役割だと思う。
社内の意識改革にも取り組んでいる。
社内活動を活力あるものにするため、ボトムアップによる働き方改革をスタートさせた。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用し、新しいコミュニケーションツールを取り入れ、社内のスマート化を促進している。その一環として地域に対し、全社的にエネルギーを注ぎたい。地域があって中央があると考えている。支社で役員会を開いたり、新しいツールでコミュニケーションを図ったりしてボーダーレスな環境を整備していきたい。