神奈川県立近代美術館 葉山
海と呼応する学芸員と一緒に作り上げた美術館
ネットワーク型美術館の誕生
神奈川県立近代美術館は鎌倉の本館・別館そして葉山の新館と3館の連携で活動が展開される全国でも数少ない「ネットワーク型」美術館です。
美術館建設事業で初めてPFI手法を導入
美術館建設事業では全国で初めてPFIの手法が導入されました。県が敷地と施設を所有し、民間事業者が建設と維持管理・美術館支援業務を分担するという事業です。
「海」・「山」・「光」の3つを体感する美術館
敷地は高松宮邸跡地で三ヶ岡山がせまる海岸際で、「海」・「山」・「光」の3つを体感する美術館をテーマとして具体化しました。
施設概要
- 公式サイト
- WEB
- 用途
- 美術館
- 構造
- SRC、RC、S
- 規模
- 地上2階、地下2階
- 延床面積
- 7,112m2
- 竣工
- 2003年3月
受賞歴
- 2008年
- 公共建築賞 優秀賞
- 2003年
- 神奈川建築コンクール 優秀賞
- 2003年
- JCDデザイン賞
海と一体となった白い箱
湘南の「海」・「山」・「光」を体感する
敷地は高松宮邸跡地で、葉山御用邸も間近な三が丘山がせまる海岸際です。
宮邸時代の木々と海岸特有の植生、潮騒、なによりも強い湘南の光が特徴です。「海」・「山」・「光」の3つを体感する美術館をテーマに「散策路」・「中庭」・「白い箱」として具体化しました。
中庭が中心の美術館
美術館は中庭を囲む2つの「L型の平面形」を採用しています。中庭は海と山に臨み、「潮騒を聞き風を感じる」、ある意味で館の中心となる空間です。ここに面するレストラン・ミュージアムショップとともに美術館の楽しさと、活動を拡大する場としての意図が込められています。
「白い箱」の追求
展示空間は企画展示を中心に構成され、「高い天井」、ノイズのない「白い箱」、そして「自然光の導入」が求められました。4つの展示室のうち3つに自然光が導入されています。暗転から全開まで展示にあわせた、光を生かした新しい展示表現を期待しています。
設計者からの一言
葉山の澄んだ光を天空から取り込んだ展示室は、ノイズを極力排除した作品に集中できるホワイトボックスとしました。一方、テラスでは海のささやき、山のきらめきを感じることができます。鑑賞後のレストランでのおいしい食事は鑑賞後の感動の余韻をさらに高めてくれます。
やはり海が一番の見所です。環境がさらにこの建物の魅力を倍増させており、計画の中にたくさんのビューポイントを織り込んでいます。中庭から見る夕陽に染まった富士山のシルエットは最高です。レストランの前面に広がる海と緑や展示室から見える湘南の海など、建物の良さをさらに引き立てています。
デザインという品質を担保したPFI
本事業の大きな特徴は設計に関わる部分、すなわちコンペによる設計者選定、その後の調査設計・基本設計・実施設計は通常の県発注事業とまったく同じプロセスを経たことです。 このことは美術館という「機能」に加えて、「デザイン」が大きな比重をしめる施設ではきわめて重要なことです。コスト優先がいわれるPFI手法の中で、デザインを含めた建物の品質を担保するという点で、一つの可能性を見いだせたと思います。
撮影者:平剛風アトリエ, 近代建築社