高知県本庁舎 免震レトロフィット
建物の『保存と再生』
新しい付加価値を持つ庁舎として『再生』
高知県庁の免震レトロフィット改修です。免震レトロフィットは、既存の建物をほとんど変えずに耐震性能を向上させますが、建物の状態によっては内部の補強工事も行います。
今回はレトロフィットに加え、内部の耐震補強改修工事、劣化が進んだ部分に対する機能改善工事を行い、庁舎に新たな付加価値を与えています。
『保存』について
竣工後約50年を経た県有財産としての建物が、今後も生き続ける価値の高い庁舎になったことは、これからの時代に大きな影響を与え続けてくれると、期待しています。
建物の保存・再生と景観・環境の保全について
保存と再生
人造石塗ツツキ仕上といった現在ではほとんど見られない仕上げやタイルなどの内装材料については当時の風合いを再現することに腐心しました。
そのほか、渡り廊下部分では、免震エキスパンションジョイントを設置するため一度解体し、再構築を行いましたが、階段や床の仕上げを新旧でそろえるため、骨材・素材と色の検討を重ねています。
景観・環境の保全
高知城の城山を背景に、緑豊かな周辺景観を損ねることのないよう、現状のオリジナルデザインを踏襲しながら、新しい改修を付加し、より高い価値と機能を持った庁舎となりました。
免震レトロフィット改修工事
本庁舎では、地下1階を有し居室として利用していたため、基礎免震としました。施工中も庁舎機能は活かしながらの居ながら工事で、既存のドライエリアを有効利用し施工計画を立てました。県内でも有数の84台の免震装置を設置しています。
設計者からの一言
建築家岸田日出刀氏の晩年の作品である県本庁群は、高知県産の材料がふんだんに使われ、ディテールも隅々まで統一されていました。
県産材等を使った当時の工法、ディテールを繰り返し顧みながら、現代の新しい工法で実現するために考察して再生しました。巨匠岸田氏の作品をトレースできたと感じています。
利用者からの一言
高知県では南海地震に備え、ハード面とソフト面の整備を進めています。高知県本庁舎等では、来庁者・職員の安全性と災害復旧等の活動拠点としての機能を確保するため、2007年から設計着手し、2012年に耐震改修工事を完了しました。
撮影者:A.P.First 荒木義久